2025年6月14日 指先 かろうじて美しさへと伸ばす指先は、たとえ指先以下が汚らわしかったとしても決して矛盾するものではないと僕は思う。むしろそれゆえに、唯一の救いのようにして美しさを求めることもある。人間の世界の芸術は、そもそもがそんな風にして生まれるものなのではないかとも思う。表も裏もなにもかもが美しく、綺麗な人だけが、美しい表現をするような、そんな世界ではなく、悲しみも闇も含んだ土の上に芽吹き、育つもの。悲しみや闇を汚らわしいと消していったら、やがては美しさも消えてしまうように思う。